44条の3(親法人等又は子法人等が関与する行為の制限)
金商業者の公正な競争を阻害する行為の禁止

金商業者は、通常の取引と異なる条件であって取引の公正を害するおそれのある条件で親法人等又は子法人等と有価証券の売買その他の取引を行うことが禁止されています。

禁止されている理由は、文字通り、取引の公正を害するからです。

金商法の目的の一つは国民経済の健全な発展です。

国民経済の健全な発展とは、もう少し具体的にいえば、限りある国民の資産を適切に配分するという意味です。

ですから、市場は効率的でなくてならず、効率性を阻害するような取引の公正を害するような行為を金商法は禁止しています。

禁止されている行為は具体的には次のような行為です。

通常の取引と異なる条件であって取引の公正を害するおそれのある条件で

1 親法人等又は子法人等との間で有価証券の売買を行う行為

2 親法人等又は子法人等のために有価証券の売買の媒介を行うこと

1は、親法人等又は子法人等が所有する株券を市場価格と異なる条件で売買する行為が該当します。

特に、親会社が子会社である金商業者の支援のために、親会社が所有する株券を市場価格より安く売る行為や、親会社が子会社である金商業者が所有する株券を市場価格より高く買う行為は、取引の公正を害し、金商業者の公正な競争を阻害するため禁止されます。

この禁止規定は、もともとは、この事例のように、親会社が子会社である金商業者を経済的に支援することで、金商業者の公正な競争を阻害することを禁止するための規定です。

ですから、2の例として、親会社が所有する株券の売買の媒介を子会社である金商業者が行う際、親会社が子会社である金商業者に通常の取引よりも高い媒介手数料を支払う行為は禁止されます。

ただ、文言通り解釈する必要があるため、子会社の金商業者の親会社による支援行為でなくても、条文に該当する外見を有する行為は、禁止規定違反になる可能性があります。

例えば2において、親法人等が所有する不動産信託受益権の売買の媒介を子会社である金商業者が行うに際し、親会社が子会社である金商業者に通常の取引よりも低い媒介手数料を支払う行為も禁止されることがあり得ます。

ただ、この場合は、子会社である金商業者の親会社に対する特別の利益の提供であると考えるのが妥当です。