38条(禁止行為)
特別の利益の提供

金商業者は顧客に対し、「特別の利益」を提供することも、将来提供することを約束することも禁止されています。

ところが、「特別の利益」とはどのような利益なのかは金商法に定義がありません。

このため、金商業者は、特別の利益とは何かを特定する作業が必要になります。

特別の利益を特定するために理解する必要があることは、特別の利益の提供が禁止される理由です。

特別の利益の提供が禁止されている理由は一つです。

「金商法の目的を達成するため」

です。

金商法の目的は、簡単にいえば、金商法を通じて「有価証券の公正な価格形成」を手段とし、「国民経済の健全な発展」と「投資者の保護」という目的を実現することです。

この目的を達成するために特別の利益の提供が禁止されています。具体的には次の通りです。

特別の利益の提供がなければ本来市場に参加しなかった投資者が市場に参加することになり、有価証券の公正な価格形成をゆがめることになる(公正な価格形成の観点)

特別な利益の提供は取引の公正を害し、限りある国民資産の配分を歪める結果になる(国民経済の健全な発展の観点)

特別の利益の提供がなければ本来市場に参加しなかった投資者が市場に参加することになり、投資者に不測の損害を及ぼすことになる(投資者保護の観点)

また

特別な利益の提供は金商業者の財務の健全性を損なうことになる(ひいては投資者の保護に反することになる)

という理由もありますが、最近は重視されない傾向にあります。

例えば、株券の売買では利益相反を起こすためありえませんが、不動産信託受益権の売買では、金商業者が売主と買主の両方のために売買の媒介を行うことがあります。

このとき、売主に対しては売買価格の3%の報酬を請求したのに、買主からは減額を要求されたため買主に対しては売買価格の1%の報酬を請求した場合、買主に対して減額したことは特別の利益の提供になるかという問題が生じます。

この場合、減額しなければ買主は市場に参加しなかったかもしれないし、他の金商業者に媒介を委託していたかもしれないので、公正な価格形成の観点からも、国民経済の健全な発展の観点からも、投資者の保護の観点からも「特別の利益の提供」です。

ただし、不動産信託受益権の売買を成立させるために、売主に対しては多大な作業が生じていたが、買主に対しては作業が限定的だったという事情など、報酬の減額を正当化する合理的な根拠がある場合には、買主に対する報酬の減額は認められると考えます。