29条の4(登録の許否)
人的構成の不足は登録拒否・取消し事由
「金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者」(人的構成要件を満たさない者)は、登録を拒否され、また、既に登録している金商業者の場合、金商法52条1項1号から、登録取消し事由になります。
人的構成要件のポイントは、実務的には、以下の3点です。
1 営業部門における経験者の配置
2 知識・経験を有するコンプライアンス担当者の配置
3 知識・経験を有する内部監査担当者の確保
まず、営業部門における経験者の配置が必要です。ここで経験者とは、一種業者なら一種業務の、二種業者なら二種業務、運用業者なら運用業務の経験者を指します。(助言業者に関しては一概に言えません。)
また、経験者とは営業成績の良い営業の知識や経験がある者のことではなく、金商法を始めとする業務に関連する法令の知識や実践の経験者を指します。
特に、不動産信託受益権を扱う二種業者の場合、宅地取引士として重説を行った経験のある者を配置することが求められます。
不動産信託受益権の売買に関する契約締結前交付書面の記載内容が重説と重複している点が多いからです。
コンプライアンスに関しては、役員に、金商業者に適用される法令の知識や実践の経験のある常務に従事する役員を配置する必要があります。
なお、コンプライアンス経験者を配置する必要もありますが、役員が担当することも認められます。
注意すべき点は、求められる「コンプライアンスの経験」は、一種業者なら一種業務の、二種業者なら二種業務の、運用業者なら運用業務のコンプライアンスの経験を意味することです。
「一種業者のコンプライアンス部門で株券の売買審査を担当していました」といっても、二種業者や運用業者のコンプライアンス担当者として認められませんし、経験の範囲が狭すぎるので、一種業者のコンプライアンス統括者としても認められないと考えます。
営業部門の経験者やコンプライアンス経験者は常勤であることが求められます。
もっとも、テレワークが推進する中、常勤の意味も緩やかに解釈され、相応の勤務実態が認められるのであれば、リモートで営業所の業務を相応な時間管理することができるのであれば、常勤であると認められると考えるのが自然であると考えます。
内部監査担当者は、常勤が求められませんが、日常的に所属する金商業者の業務を把握していることが必要です。
内部監査担当者に関して重要な点は「独立性」です。
内部監査担当者は、すべての部門から独立している(他の業務を兼務していない)ことが必要です。
もっとも、営業部門やコンプライアンス部門の他の部門であれば、例えば、総務部門であれば兼務も可能であると考えます。
ただし、この場合、総務部門の内部監査は別の内部監査経験者が実施する必要があることになり、内部監査経験者を2人配置する必要が出てくることから、内部監査担当者を他の部門と兼務させると、かえって人材の確保が難しい場合も想定されます。