虚偽告知と虚偽表示

虚偽告知は、刑事罰の対象となる行為で、金商業者が虚偽のことを告知する行為です。告知の手段は問いません。書面、口頭、サイトの掲載のいずれでにも適用されます。

虚偽表示は、刑事罰の対象とはならない虚偽の表示のことで、表示の手段は問いません。書面、口頭、サイトの掲載のいずれにも適用されます。

誤解を生ぜしめるべき表示は、投資家に誤解を与える表示のうち、「べき」とあることから、投資家に誤解を与える可能性が高い表示のことです。

今日は、事例を検証しながら、虚偽告知、虚偽表示、誤解を生ぜしめるべき表示の違いを検討します。

さて、読者の方は、ファンドの宣伝として、次の文句がサイトに掲載れていた場合、どんなファンドを想像するでしょうか。

「不動産のプロ厳選の案件に投資が可能」

「平均利回り10%以上の不動産投資」

おそらく、多くの個人投資家は、不動産のプロが厳選した物件に投資するファンド、不動産の値上がり益を期待できるファンドを想像します。

既に何の宣伝文句かわかった方もいると思いますが、これらは、「ソーシャルレンディング」を運営する二種業者のサイトで、ファンドの説明として実際に利用されている宣伝文句です。

ソーシャルレンディングは、一般に、クラウドファンディングで出資された投資家の金銭が貸付けに回る仕組みです。

上述の宣伝文句を掲載しているサイトに記載されたファンドの仕組みの場合、投資家のお金は貸金業者の資金調達手段となり、貸金業者が、主として不動産を担保に企業に金銭を貸し付けています。ですから、投資家は、不動産の値上がり益を期待できないことはもちろん、もともと不動産に一切投資していません。

このように、投資家に間違った心証を与える可能性の高い宣伝文句が、「誤解を生ぜしめるべき表示」です。

次の宣伝文句はどうでしょう。

「返済が滞った場合には、担保権の実行により貸付金を回収します」

これも、ソーシャルレンディングを運営する二種業者のサイトに掲載された宣伝文句ですが、証券取引等監視委員会の検査結果によると、このような宣伝文句も、貸付けの中に担保設定していないものが存在する場合には、同様に、「誤解を生ぜしめるべき表示」です。

「裏付資産として、事業会社から売掛債権を買い取っています」

これは、資産担保証券(ABS)を発行する事業者のために、ABSを販売する証券会社による、ABSの説明のための宣伝文句です。証券取引等監視委員会の検査結果によると、このような宣伝文句は、事業会社が買い取ったとする売掛債権が一部でも実在していない場合には、「虚偽表示」です。

「裏付資産として、事業会社から診療報酬債権を買い取っています」

これは、同じくABSを発行する事業者のために、ABSを販売する証券会社による、ABSの説明のための宣伝文句です。証券取引等監視委員会の検査結果によると、このような宣伝文句は、証券会社の役員等が、買い取った診療報酬債権の残高が社債の発行高に比して著しく僅少であることを認識してしたにもかかわらず、これを意図的に秘匿・隠蔽したまま、社債の販売を継続した場合、「虚偽告知」です。

サンプルが少ないため、多少乱暴ではありますが、以上の事例から、虚偽告知、虚偽表示、誤解を生ぜしめるべき表示の違いは、以下の点にあると考えられます。

虚偽告知は、意図的に事実を隠蔽し、投資家に向けて虚偽の表示をする行為

虚偽表示は、隠ぺいを意図せず、結果的に、投資家に向けて虚偽の表示をする行為

誤解を生ぜしめるべき表示は、投資家に対して行う表示のうち、重要な事項について誤解を生ぜしめる可能性の高い表示であって、虚偽表示と同視し得る行為

虚偽表示と誤解を生ぜしめるべき表示は、事実を隠蔽する意図がなく、結果的に、金商業者が投資家に対し、事実と異なる心証を形成する行為を指します。

「うっかり」、「不注意で」、投資家に事実と異なる心証を与える表示をすると、虚偽表示または誤解を生ぜしめるべき表示に該当する可能性があるため、広告審査担当者は、虚偽告知・虚偽表示・誤解を生ぜしめるべき表示の観点から広告を審査するときには、「勘違いを生みそうな表現」をすべて削除する、または起案者に修正を求めるなどの対応をすることが重要だと考えます。