金商業者の内部監査1

金商業者は、内部監査を充実させることが求められています。内部監査部門の体制が整備されていない場合、重い行政処分が課されることからも、内部監査の実施は必須です。

内部監査を実施する部門を内部監査部門といい、内部監査部門において内部監査を担当する者を内部監査担当者といいますが、金商業者の内部監査部門には、次の2つが求められます。

1 独立性

2 専門性

内部監査部門の「独立性」とは、内部監査部門は、他のいかなる部門からも独立していなければならないという原則です。

内部監査部門の独立性とは、内部監査担当者が行う内部監査は、他の部門からの干渉を受けてはならないという意味です。

ここで、「他の部門からの干渉」とは、他の部門による圧力で内部監査担当者が実施する内部監査が歪められることを指します。

例えば、内部監査担当者が、コンプライアンス部門を兼任していると、コンプライアンス部門に対する内部監査の実施の際、コンプライアンス部門の部門長から内部監査担当者に圧力がかかり、内部監査が歪められるおそれあります。

内部監査担当者がコンプライアンス部門長であって、コンプライアンス部門の部門長からの圧力がなくても、コンプライアンス部門を兼任する内部監査担当者によるコンプライアンス部門に対する内部監査は、「自己監査」(自分で行ったことを自分で監査すること)になってしまうことから、甘くなるおそれがあります。

これらの弊害を回避するために、内部監査担当者は、他のすべての部門から独立している必要があるわけです。

問題は、内部監査担当者は、取締役会や代表取締役からも独立している必要があるかという点です。

欧米においては、内部監査担当者は、取締役会や代表取締役からも独立しています。内部監査担当者は、取締役会や代表取締役に対しても、内部監査を実施する必要があるからです。

これに対し、日本においては、内部監査部門又は内部監査担当者は、取締役会や代表取締役の指示を受ける立場にあるのが普通です。代表取締役が内部監査担当者を兼任している金商業者までいます。

日本の内部監査は、発展途上にあり、未熟だということですが、内部監査部門又は内部監査担当者が、取締役会や代表取締役の指示を受ける立場であっても、内部監査担当者は、取締役会や代表取締役に対する内部監査を実施しなければならないことから、金商業者は、内部監査の独立性を極力確保するための体制を整備する必要があります。

具体的には、金商業者が、内部監査担当者の給与の安定を保証することが考えられます。

内部監査部門は、また、「専門性」が求められます。内部監査部門の「専門性」とは、内部監査担当者は、内部監査に対する知識と経験を備えていなければならないという原則です。

内部監査に対する知識とは、内部監査の方法論や内部監査のベースになる法令等の知識を指します。

内部監査の方法論は、PDCAサイクルを意味する場合が多いですが、実務的には、PDCAサイクルにこだわると、内部監査が形式的な監査になることがあります。金商業者の内部監査担当者は、内部監査を実施する際、PDCAサイクルを気にすることなく、内部監査を実施した方が、実質的な内部監査を実施することができます。

法令等に関する知識は、これは身に着けられるものですから、内部監査担当者は、法令等の知識を身に着けるために、日々研鑽する必要があります。

問題は、専門性をもった内部監査担当者がいない場合はどうすれば良いかという点です。

内部監査は、自浄作用が求められることから、外部監査で代替することは不可能ですから、金商業者は、外部監査だけを実施し、内部監査を実施しないということができませんが、内部監査担当者は、外部監査の実施に参加するということは可能です。

ですから、もし、内部監査担当者に専門性がない場合、金商業者は、外部の専門家に監査を委託し(内部監査を外部委託し)、内部監査担当者が外部監査に参加するという暫定的な方法を採用することが考えられます。