弊害防止措置2

弊害防止措置2

2019年4月8日のメルマガからの抜粋です。


前回の続きです。

1 二以上の種別の業務を行う場合の禁止行為

金商法44条1号は、次の行為を禁止しています。

「投資助言業務に係る助言を受けた顧客が行う有価証券の売買その他の取引等に関する情報又は投資運用業に係る運用として行う有価証券の売買その他の取引等に関する情報を利用して、有価証券の売買その他の取引等の委託等(媒介、取次ぎ又は代理の申込みをいう。以下同じ。)を勧誘する行為」

この規定は、助言業者の助言や運用業者の運用に関する情報を利用して、兼業する一種業務や二種業務の利益を図ってはならないという規定です。また、委託とは、定義されているように、一種業務あるいは二種業務として行う有価証券の媒介、取次ぎ又は代理のことを指します。

(1) 典型例

この禁止規定は、助言業者又は運用業者が、助言業者又は運用業者であるという特別の地位にあることから取得し得る助言又は運用に係る情報を利用して、一種業務又は二種業務の利益を図ることを禁止しようとするものです。

この禁止規定の典型例は、上場株券の取引に係る助言や運用に関する情報を利用して、一種業務や二種業務の利益に資するために行う委託の勧誘です。

事例1

助言業務と一種業務を兼業している兼業業者が、投資顧問契約を締結している顧客に「X社が発行する上場株券は買い」という助言を行い、当該助言に基づいて当該顧客が行う当該株券の買付け情報を利用して、一種業務の顧客に対し、X社が発行する上場株券の買付けの申込みの勧誘を行った。

この場合、兼業業者は、助言業務の顧客の取引情報を利用して、一種業務の利益を図っています。兼業業者が二以上の種別の業務を行っているという特別の地位を利用して引き起こした異なる種別の業務に係る利益の衝突を生じさせています。

同様の事例は、運用業務と一種業務を兼業している兼業業者においても起こり得ます。

事例2

運用業務と一種業務を兼業している兼業業者が、運用業務としてY社が発行する上場株券を買い付ける前に、一種業務の顧客に当該株券の買付けの申込みの勧誘を行い、当該顧客が当該株券を買い付けた後、運用業務として当該株券を買い付けた。

この場合、兼業業者は、運用業者としての取引情報を利用して、一種業務の利益を図っています。兼業業者が二以上の種別の業務を行っているという特別の地位を利用して引き起こした異なる種別の業務に係る利益の衝突を生じさせています。

(2) 不動産信託受益権

不動産信託受益権を取り扱う金商業者の多くは、助言業務あるいは運用業務と二種業務を兼業しています。したがって、次の事例が金商法44条1号に規定する禁止行為に該当するか否かが問題となります。

事例

助言業務と二種業務を兼業している兼業業者(いわゆる不動産AM)が、顧客(SPC)に不動産信託受益権を取得させるに当たり、二種業務の顧客が所有する不動産信託受益権を適正評価よりも高値で取得させた。

この場合、兼業業者は、助言業務に係る助言を受けた顧客(SPC)が行う有価証券(不動産信託受益権)の買付けに関する情報を利用して、二種業務の顧客に当該顧客が所有する有価証券の売付けの申込みの勧誘を行っているため、兼業業者の行為は、金商法44条1号に規定する禁止行為に当たり得ます。

もっとも、法令違反となるかどうかは、実質的に判断されるべきものと考えます。

事例の場合、助言業務の顧客に二種業務の顧客が所有する不動産信託受益権を適正評価より高値で取得させていることから、実質的に判断して、金商法44条1号に規定する禁止行為に該当するものと考えます。


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