弊害防止措置1

弊害防止措置1

2019年4月1日のメルマガからの抜粋です。


金商法の規定は理解が難しい規定が少なくありませんが、難しい規定の一つが、「弊害防止措置」に関する規定です。

金商法は、弊害防止措置について、複数の規定を、複数の箇所で規定しています。金商法でいう「弊害」とは、利益の衝突を意味します。利益の衝突の典型は、有価証券の売買です。買い手はできるだけ安値で買いたい、売り手はできるだけ高値で売りたいという有価証券の売買当事者間で生じる利益の衝突です。

金商法は、金商業者が取引に介在することによって起こり得る弊害を防止するための規定をおいています。

金商法の前身である証券取引法(以下「証取法」という。)においては、弊害の典型は、銀行が子会社証券会社を設立することから生じる利益の衝突の調整でした。

一つは、親銀行が顧客に対する融資を条件に子会社である証券会社との取引を強要する親銀行による「優越的地位の濫用」です。

もう一つは、子会社である証券会社が、親銀行が所有する融資残高を含む顧客情報を親銀行から受領して銀行系列ではない証券会社よりも営業活動を有利に進める「親銀行と子会社証券会社との間の顧客の非公開情報の共有」です。

これらが、証取法に弊害の典型として規定され、弊害を防止するための措置、すなわち弊害防止措置に関して複数の規定が設けられていました。

金商法は、第3章第2節第6款に「弊害防止措置等」を設け、典型的な弊害に対する防止措置を規定しています。また、同第2款及び同第3款におかれた助言業者と運用業者に係る禁止規定にも、弊害防止措置を規定しています。

金商業者、とりわけ助言業者や運用業者は、実務上、後で見るように、弊害を生じやすく、したがって、弊害防止措置に敏感であるべきです。いわゆる不動産ファンドに関して助言あるいは運用をしている金商業者も同様です。

今回のシリーズでは、全ての金商業者の実務において非常に重要な規定である弊害防止措置規定について、金商法が想定している弊害は何か、当該弊害を防止するために金商法はどのような規定を準備しているかなどについて、事例を交えながら解説します。

解説の前に、金商法が規定している弊害、すなわち、利益の衝突の分類について、若干触れておきます。

金商法は、次の関係において弊害が生じることを想定しています。

1 同一の金商業者が二以上の異なる種別の業務を業としている場合における一方の業と他方の業との間に生じ得る利益の衝突

2 金商業者の親子会社と当該金商業者の顧客との間で生じ得る利益の衝突

3 同一の金商業者の同一の種別の業務の業における顧客相互間および顧客・金商業者間の利益の衝突

ここで「業務の種別」とは、一種業務、二種業務、助言業務、運用業務の別のことを指します。

今回のシリーズでは、1から3の各々の弊害を防止するために金商法に設けられた防止措置規定について、説明します。


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