金商法の適用と勘定科目の選択との関係

金商法の適用と勘定科目の選択との関係

2019年3月18日のメルマガからの抜粋です。


金商法が適用されるか否かの判断にあたっては、会計処理に従う場合があります。例えば、株券の取引であれば、勘定科目として棚卸資産に計上していれば金商法の適用を受けますが、投資有価証券に計上していれば金商法の適用は受けない場合があると考えます。

この点を踏まえ、次の場合はどうなるでしょうか。

宅建業者(二種業者)が、現物不動産の売主と買主双方のために売買の媒介を行っていたところ、買主から「受益権なら買う」といわれたので、売主に相談したところ、売主がこれを了解した。ところが、買主が資金を用意できるのは3か月先であったた。この場合、二種業者が、売主から不動産信託受益権を自ら取得する行為は、金商法違反となることはないか。

この回答をする前に余談ですが、信託受益権は、会計処理上、そもそも、有価証券に計上すべきでしょうか。

公認会計士協会・会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」にもみるように、会計上、金融商品は、金融資産と金融負債という概念でとらえられることがありますが、金商法上の有価証券は、一言でいうと、金銭支払請求権(金銭債権)のことです。

株式が有価証券である理由は、株主が発行者に対し、配当支払請求権と残余財産分配請求権を有するからであり(この2つの権利が有価証券とみなされている)、ファンド持分が有価証券とみなされる理由は、出資者が発行者に対し、配当支払請求権と残余財産分配請求権を有するからです。

仮想通貨は、金銭支払請求権(金銭債権)ではないため、有価証券でないことはもちろん、金融商品でもないわけです。

更に、金商法は、有価証券の定義を絞り込むために、これらの金銭支払請求権のうち、原則として、投資者から集められた金銭が他人によって運用されている場合における金銭支払請求権のみを、金商法の適用対象としています。(他の法律で規定されているものを除く)

したがって、金銭支払請求権であっても、例えば、不動産を賃貸して得られる家賃支払請求権は、有価証券ではないですし、金銭消費貸借契約に基づく利息支払請求権も、有価証券ではないわけです。

信託受益権は、信託財産が金銭であれ、金銭債権であれ、不動産であれ、受益者が受託者に対して有する金銭支払請求権(金銭債権)であり、委託者が委託した金銭等を受託者が運用していることから、金商法上、有価証券となるわけです。

閑話休題。

信託受益権は、すべて、会計処理上、勘定科目を有価証券として計上されることが妥当であるという前提に立つと、例題の場合、二種業者が取得した有価証券を棚卸資産や売買目的有価証券として計上すると、二種業者が自ら取得した行為は、買主に取得させる目的で取得した行為である「有価証券の引受け」(一種業務)と認定され、金商法違反に問われる可能性があります。

一方、投資有価証券に計上すると、見た目は同じでも、投資目的で取得しているため、金商法の適用を受けない可能性があります。

実際には、有価証券の引受けに該当するか否かは、金商業者が有価証券を取得した「目的」(内心)が問題になりますが、形式的には、いずれの勘定科目に計上したか(外観)が、有価証券の引受けに該当するか否かの判断材料になると考えます。

もっとも、ここでの話は、目的に沿った会計処理を選択することが肝要という話をしているのであって、買主に取得させることを目的として取得したことが明らかな場合に、取得した有価証券を投資有価証券に計上しても、当然のことながら、そのような取得は、有価証券の引受けであると認定されると考えます。


メルマガの申込みはこちらから。